退職 | 2021年5月31日

「諭旨解雇」「諭旨退職」「依願退職」って懲戒解雇と何が違うの?それぞれの特徴をまとめて紹介!

この記事を書いた人

コンサルタント

大西 理

医療系商社で基幹病院を担当し、医師や経営・管理部門、各メーカーとの関係構築に努める。東北に貢献したいと考え、地元の人材紹介業へキャリアチェンジ。日夜、転職希望者と企業の最高の出会いを追及している。趣味はボルダリングとダーツ。

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毎日さまざまなニュースが報道されているなかで、不祥事により誰かが懲戒処分となったという内容を目にしたことがあるのではないでしょうか。

そこでよく使われているのが「諭旨解雇」や「諭旨退職」というワード。

非常によく似ている言葉ですが、意味は微妙に違います。

今回は、さらに混同しやすい「依願退職」も交えてその違いを解説していきます。

 1.はじめに知っておきたい「懲戒解雇」

解雇とは“会社側が一方的に労働者との契約関係を破棄すること”というのは周知でしょう。

しかし一口に解雇と言っても、辞めさせられる原因が何であったかによって「普通解雇」「整理解雇」「懲戒解雇」と3つに区分けされることはあまり知られていません。

そのなかでも、最も重い処分とされるのが「懲戒解雇」です。

「諭旨解雇」と「諭旨退職」の違いを知るには、まずこの懲戒解雇についての理解を深める必要があります。

「懲戒解雇」の意味は?

懲戒解雇とは、会社の規律と秩序を乱した労働者に対して課される制裁処分ことで、教員や警察官をはじめとする公務員の場合は懲戒免職と呼ばれます。

なお、日本国内における労働者の立場は、労働基準法によって厚く保護されているので会社が懲戒解雇を実施するというのは、よほどの事情がある場合に限られていると言えます。

「懲戒解雇」の理由に当てはまるケース

長期の無断欠勤

たった一日でも会社に損害を与える無断欠勤。
それが長期間ともなれば、懲戒解雇を認められる可能性が高いです。

労働基準監督署は「解雇予告除外認定」が適用される基準として、“社員が2週間以上正当な理由なく無断で欠席し、出勤の催促にも応じない場合”と定めているので、長期の無断欠勤と判断する目安は14日間が一般的なようです。

大幅な経歴詐称

労働契約とは、会社と労働者との信頼関係によって成り立つもの。
学歴や職歴、または資格の有無などの経歴詐称によって、会社側が労働力を適正に配置する判断を誤らせることは、信頼関係を大きく揺るがす行為とみなされます。

本当の経歴ではその労働者を採用するにいたらなかったとわかれば、懲戒解雇が認められても当然でしょう。

犯罪など法令に反する行為で逮捕や起訴をされた場合

労働者が会社内で問題を起こさなくとも、私生活で何か重大な犯罪を起こして逮捕・起訴されれば、懲戒解雇の理由として認められる可能性が高いです。

ただし、冤罪もしくは無罪だった場合は懲戒解雇が取り消され、復職が認められることもあります。

会社の金品横領

会社が労働者と契約関係を結ぶ理由は、あくまで利益をもたらしてもらうためです。
そのため、労働者による横領・着服は会社に大きな不利益をもたらす背信行為に他なりません。

事案が告訴されるか否かは問わず、懲戒解雇となる十分な理由となります。

「懲戒解雇」となることで受けるペナルティ

前述したとおり、「懲戒解雇」は解雇の中で最も重い処分です。
労働者が懲戒解雇となることで被るデメリットは「普通解雇」や「整理解雇」とは比較にならないほど多岐にわたります。

以下のようなペナルティが考えられます。

  1. 会社の就業規則によって、退職金が支払われない可能性がある
  2. 「会社都合」ではなく「自己都合」の退職扱いとなるため、他の解雇と比べて失業保険で受けられる手当が減る
  3. 履歴書に懲戒解雇されたことを明記しなければならない

何か悪いことを起こして懲戒解雇となるわけですから、当然ながらその代償は大きいようです。
もちろん転職活動にも悪影響を及ぼします。

2.「諭旨解雇」「諭旨退職」とは?

ここからが本題です。
「諭旨解雇」と「諭旨退職」は懲戒解雇の発展形となる概念といってもいいでしょう。
具体的な内容を詳しく見ていきましょう。

「諭旨解雇」は処分が軽い懲戒解雇

「諭旨解雇」とは、懲戒解雇が認められるような規則違反をした労働者に対し、実際の懲戒解雇よりも処分を軽減した解雇のことを指します。
つまり、諭旨解雇とは懲戒解雇の処分が軽いバージョンということです。

前述のとおり懲戒解雇は非常に重い処分であるため、労働者の功績や将来を汲んだ会社側の温情措置と言えるでしょう。

ちなみに、どんな理由があるにせよ労働者を一方的に解雇することで会社のイメージを損ねてしまいかねないという考えから、諭旨退職を選択するケースもあるようです。

「諭旨解雇」は懲戒免職ほど不利にならない

懲戒解雇と違って、「諭旨解雇」では解雇予告手当や退職金を受給できる場合が多いです。

また、履歴書に懲戒解雇と明記する義務がなくなるので、懲戒解雇ほど転職活動の際に不利となることもありません。

諭旨解雇よりもさらに処分が軽いのが「諭旨退職」

懲戒解雇も諭旨解雇も会社側から一方的に労働契約を解約されるという面では共通していますが、場合によっては会社側の酌量でそれを「自己都合退職」に置き換えてもらえることがあります。
それが「諭旨退職」です。

懲戒解雇が認められるような規則違反をした労働者に対して退職届を提出させることで、再就職で不利にならないようにする温情措置と言えます。

ただし、論旨退職にすると解雇予告手当を受け取れなくなるので、そこだけは注意しておきましょう。

3.「依願退職」とは

ニュースなどでの諭旨解雇や諭旨退職と同じような使われ方で、「依願退職」というワードを目にしたことがある人も多いのではないでしょうか。

一見すると諭旨退職と似ているように思えますが、全く違った意味を持っています。

依願退職=自己都合退職

依願退職とは「自らの申し出で退職すること」であり、自己都合退職と同義です。

不祥事のニュースなどで使われることが多いように思えますが、懲戒処分の一部である懲戒解雇や諭旨解雇とは大きく異なります。

また、解雇や定年退職を除くほとんどの退職は依願退職に当てはまると考えても差し障りないでしょう。

なお、労働者が提出した退職願を会社が受理しない場合は、民法第627条で“当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる”と記されています

この場合において、“雇用は解約の申し入れの日から2週間を経過することによって終了する”という規定に則り、その後2週間経てば雇用契約が終了となりますが、その場合は依願退職ではなく任意退職になります。

4.まとめ

今回紹介した退職形式は、デメリット(制裁)の多さで考えると、懲戒解雇>諭旨解雇>諭旨退職≧依願退職という順番で並べることができます。

懲戒処分を受けてしまうと、さまざまなペナルティを被ることになってしまいますが、会社側の対応によってはそれを減らすことも可能です。

もしものときのために「諭旨解雇」「諭旨退職」「依願退職」の違いは、しっかりと記憶に留めておきましょう。

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